名古屋の郷土料理の“うま味”を支える名古屋の水(大竹敏之さんインタビュー)

 
こんにちは。
キッチン大友の加藤陽哉です。
 
数多くの著書があり、最新作
「間違いだらけの名古屋めし」の
重版も決まった、、、
 
名古屋ネタ ライター
大竹敏之さんのインタビューを
つなぐ秋冬号に掲載します。
※2025年9月発行
 
つなぐ秋冬号から、その一部を紹介します。
 
味噌煮込みうどんやひつまぶしに代表される名古屋の郷土料理は、「味が濃い」とよく言われます。しかし、それは単なる「塩味の濃さ」ではなく、「うま味の濃さ」なのだと語るのが、名古屋の食文化に精通するライター・大竹敏之さんです。本日は、大竹さんに「名古屋の水とうま味の関係」についてお話を伺いました。

「名古屋は日本で最も硬度が低い軟水地域」——だしを引き出す名水の地
加藤陽哉(以下、加藤):
大竹さんの記事を拝読しました。名古屋の水が日本でも特に軟水であるというのは、正直意外でした。関西の水が和食に適しているイメージが強かったので…。

大竹敏之さん(以下、大竹):
そうですよね。一般的に「水が良い」とされるのは京都や関西ですが、実は名古屋は国内で最も硬度の低い軟水地域のひとつなんです。京都よりもさらに軟水度が高いので、だしのポテンシャルでいうとむしろ優れているとも言えます。

加藤:
名古屋の郷土料理は「濃い味」というイメージがありますが、その「濃さ」は塩味や辛さではなく、実は「うま味の濃さ」だという点に共感しました。

大竹:
その通りです。名古屋の郷土料理に欠かせない八丁味噌やたまり醤油は、アミノ酸が豊富でうま味が強い調味料。それに加えて、だしを取る水が軟水であることで、よりクリアにうま味を引き出せているのです。

加藤:
名古屋の水が、うま味の抽出を助けているということですね。

大竹:
はい。例えば、味噌煮込みうどんを作る際、水が硬水だったら八丁味噌とだしの風味がうまく調和しない可能性があります。でも、名古屋の水は軟水なので、八丁味噌の深いうま味がしっかりと溶け出し、より豊かな味になるんです。

「名古屋の喫茶文化も“水”と関係が?」
加藤:
記事では、お茶やコーヒーの味にも水の影響があると書かれていましたね。

大竹:
そうなんです。軟水はお茶の渋みを抑え、まろやかな味わいにしてくれる効果があります。

加藤:
なるほど。ということは、名古屋の喫茶店文化が発展した背景にも、水の影響があるかもしれない、と。

大竹:
そう考えることもできますね。苦みが強いと言われる名古屋のコーヒーですが、軟水のおかげで風味が引き立ち、苦みの中にも甘みがより際立つと言われています。こうした特性が、名古屋の「モーニング」や喫茶文化の発展に寄与した可能性もあるかもしれません。

「水を活かした名古屋の食文化を未来へ」
加藤:
キッチン大友でも、「名古屋の水が引き出すうま味」という視点を、料理の開発や発信に活かしていけたらと感じました。

大竹:
そうですね。例えば、だしの取り方を工夫することや、八丁味噌やたまり醤油の魅力をさらに引き出す新しい料理を考えるのも面白いかもしれません。

加藤:
名古屋の水が、名古屋めしのうま味を支えているという話は、今後の料理づくりのヒントになりそうです。今日は貴重なお話をありがとうございました!

大竹:
こちらこそ、ありがとうございました!

おわりに
名古屋が日本屈指の軟水地域であり、それが郷土料理の「うま味の濃さ」を支えているという視点は、名古屋の食文化を再認識する新たなきっかけになりそうです。だしの取り方、調味料の活かし方、喫茶文化の発展——水という視点から名古屋の味を捉え直すことで、新たな魅力が見えてきます。

キッチン大友では、これからも「名古屋の水が引き出すうま味」を活かした料理を追求し、発信していきます。
 
その他の記事は、つなぐ秋冬号をご覧ください!
 

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